Derby

 ダービー(derby。ポルトガル語ではデルビー)というものがある。ご存知のとおり、同じ都市、地方をホームタウンとするクラブ同士の戦いのこと。ポルトガルならリスボンダービー(Derby Lisboeta。ベンフィカスポルティング、ベレネンセス)、ポルトダービー(ポルトボアヴィスタ、サルゲイロス)、ミーニョダービー(ブラガ、ギマラエンス)、マデイラダービー(マリッティモ、ナシオナル)など。語源はイングランドのダービーという都市名からというのが最有力。昔、サッカーチームというのは教区(教会は学校と同じように、基本的には住所によって通うところが決められている)ごとに設けられていて、その中でも一番熱狂的な試合だったのが、ダービーにある二つの教区によるチームのものだったことから、というのが現在、最も支持されている所以らしい。

 一方、ナショナルダービーと呼ばれるものがある。この場合、ホームの都市などは関係なく、その国を代表する2つのクラブの対戦のことだ。日本で言うなら、昔は読売対日産だろうし、最近はアント対ジュビロの試合で言われていた。ポルトガルではベンフィカポルトになるのだろう(あえてスポルティングは加えない。ポルトならともかく、ベンフィカを押しのけてスポルティングポルトガルを代表するクラブと言われるはずがないから。名前だけは大層なものがついているが)。
 ナショナルダービーは大きく2つに分類される。純粋にビッグクラブの対戦であるものと、地方間の対立を反映しているもの。世界的に見ると、実は前者の方が多いようだ。イタリアダービーユベントスミラン。本来はユベントスインテルらしいが、実力的にもこっちでしょ)は、両クラブとも北部の都市であるし、イングランドダービー(マンUアーセナル)については、ロンドンがマンチェスターなんて相手にするか?っていう感じだし。ドイツダービーバイエルンドルトムント)も、オランダダービー(アヤックスフェイエノールト)も、あくまでクラブ間、そしてその地元ファンたちの対立であり、サッカー好きではない人にとってはどうでもいいもののようだ。後者に代表されるのは、なんと言ってもスペインダービー(バルサ対レアル)であり、地方ではなく単独の都市も入れればフランスダービー(パリSG対マルセイユ)もこっちだろう。スペインダービーは民族間の対立も加わるから、あの雰囲気が作り出せるのであり、そこには娯楽だとは割り切れないものを感じる。もちろん、ポルトガルダービーもこっち。彼らにとって、サッカークラブというのは自分たちのアイデンティティを代表するものであるから、メディアも煽りに煽る。ポルトガルにおける南北間の、リスボンポルトの対立というのを、改めて知る瞬間。ただ、私はあまりナショナルダービーと呼ばれるのが好きではなく、クラシコ(Clássico)の方を好んで使うけれど。70年の歴史を持つこの対戦を指すには、こっちの方がしっくりくる。

 24時間後には、既にこの試合がキックオフされている。最近はいい成績を残せておらず、ポルトの強さを際立たせる要因のひとつとなってしまっているが、そろそろ挽回してくれないととは、全てのベンフィキスタの切なる願いだろう。新しいLuzに刻まれる歴史的一歩は、歓迎できるものとなるのだろうか。